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カーク・パタソン前学長、”Japan and the Sea(日本と海)” を語る ~ICAS現代アジア研究所主催セミナーで

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ヨットで日本一周!?初めて聞いたときには驚きと共にその大航海は一体どのようなものか、なぜ「海」から日本を見つめるのか、大いに興味がわいてきたのを覚えています。

一人ヨットで日本列島の海岸線を海からたどる旅に挑戦しているのは、2002年から2007年までTUJの学長を務めたカーク・パタソン氏です。

TUJでは、文化・世相から外交・防衛まで幅広いトピックで多彩な講師を招いて”知の発信”を続けるICAS 現代アジア研究所が主催するセミナーシリーズをお届けしています。パタソン氏が登壇したセッションは、昨年11月17日(月)19:30-21:00、三田校舎で開催されました。

(講義の模様はこちらの動画で)

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パタソン氏は、冒頭でまずこの講義は日本一周の旅について語るものではなく、この航海を通じて進めている調査研究に基づき、現在執筆中の本「Japan and the Sea(日本と海)」について議論を進めたいとして、日本書紀や古事記にはじまり、日本人にとっての海とはどんな存在だったか、歴史を振り返りました。その中で、日本は島国でありながら、英国と比べ外の世界へ積極的に繰り出す海洋国家ではなく、鎖国に代表されるようになぜ自ら政治的、文化的にも閉ざされた道を選んだのか、という問いへの解を模索するものと問題提起しました。

Kirk Patterson with ICAS Associate Director Kyle Cleveland  (right)

Kirk Patterson with ICAS Associate Director Kyle Cleveland (right)

非常に興味深かったのは、日本人にとって海は「恐れるべき」畏怖の念を抱く存在であった、というパタソン氏の視点です。葛飾北斎の浮世絵で表現されている大海原の荒々しい大波の背景にある富士山、を例に日本人の自然観に触れ、津波や台風、熱帯暴風など自然の猛威による被害を恐れ、海を畏れてきた歴史的経緯を指摘しました。

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また、日本人は農耕民族として、近代まで富や力は「米」を基準としていたことを挙げ、水稲に不可欠な水の流れをいかに管理するかが経済における重要事項であった点に触れています。海は恐ろしい対象であり、海を越えた国際交易は14~5世紀までそれほどさかんに行われなかった、とパタソン氏は指摘しています。海洋国家の代表格であるイギリスが貿易、植民地主義を推し進め、外へ外へと出て行ったこととは対照的で、パタソン氏によれば元寇に象徴されるように脅威は海の向こうからやってくる、との日本人の認識があり、日本が海洋国家であるならそもそも鎖国はしなかったであろうと自論を展開しました。

講義の後のQ&Aでは、参加者から多岐にわたるさまざまな質問、議論が飛び出し、歴史観のほか、パタソン氏の「1899年制定の船舶法(※)が現在も適用されており、<外国船に対し開港している港以外はすべてデフォルトは閉港>となっていて、それぞれの港に出入港申請が必要となる日本はいまだに鎖国中」との指摘に日本人?参加者から「いかにその”鎖国”状態を解除していくか、アドバイスを」との投げかけがありました。Big question!? この大局的な質問に、パタソン氏は一呼吸おいて、いまの日本は文化的には鎖国ではないが、国のシステムとしてはまだ”鎖国的”なところがある、と回答したほか、参加者の皆様からの鋭い分析を受けて、思考のキャッチボールと闊達な意見交換が繰り広げられました。

本の完成までにはまだ3~4年かかるそうですが、今年(2015年)初夏には列島西側から北上して残り30%ほどの航海を終え、外国人として初の日本列島一周の成功へ向け、旅は続きます。

 

(※) 1899年制定 船舶法

第三条 日本船舶ニ非サレハ不開港場ニ寄港シ又ハ日本各港ノ間ニ於テ物品又ハ旅客ノ運送ヲ為スコトヲ得ス但法律若クハ条約ニ別段ノ定アルトキ、海難若クハ捕獲ヲ避ケントスルトキ又ハ主務大臣ノ特許ヲ得タルトキハ此限ニ在ラス

 

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カーク・パタソン

TUJ前学長/ICAS 現代アジア研究所非常勤フェロー (現在、日本列島一周航海中)

米タフツ大フレッチャー大学院卒(国際関係学博士)。東アジア外交史専門。TUJ前学長(2002-7)。現在、数年にわたる日本列島一周単独航海中、外国人として初の成功例を目指す。カナダ、米国の二重国籍を持ち、日本在住歴は計26年を超える。

 

<MM>

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