港区との連携事業の一貫として2007年から8回を重ねる「港区民大学」、今年は”ジャパン・アズ・ナンバースリー”をテーマに、10月31日から11月14日まで、全6回の公開講座が開催されました。
GDPの規模では今や世界第3位の日本、その「今」と「これから」を国際関係、人類学、政治学、教育学的な切り口から本学学長ストロナクはじめ6名の教授陣・研究者がそれぞれ考察・提言しました。テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)ならではの取り組みとして、講義はすべて通訳なしの英語で行われ、後半の質疑応答でも参加者から積極的に挙手があり、活発な対話の場面も見られました。港区民の方を中心に、のべ約350名の方が参加されました。
企画運営に携わっている鈴木悦子 TUJ地域渉外担当は、「2007年から区民大学に参加し、今年は8回目となりました。年々参加人数が増え、区民の皆さんの間に広く本校が知られるようになっていれば大変嬉しいです。毎回すべての講義に足を運んでくださるシニア層は本当に熱心で、頭が下がります。また、今年は20代、30代という若い方の参加も目立ちました。ここのところ外国の方の参加者が少ないので、どうアピールしていくかが今後の課題です」とコメントしています。
10月31日に開催された第1回の講義 「日本:世界における経済力3位、担う役割2位」 (Japan: #3 in Rank but #2 in Role)で、ブルース・ストロナクTUJ学長は「いつもは自分はトリ(最終講義)なんですが…」としながら、70年代後半から30年以上にわたる自身の日本での経験と現代史に触れ、「日米同盟は歴史的にみても非常に稀有な事例。通常良好な同盟関係とは文化的に親和性の高い国家間にのみ成立するが、日米ほど類似性の低い国家間ではきわめて珍しい」と振り返りました。
徐々に衰える日本の国力をいかに維持していくかについて、「経済力3位」の現状を踏まえつつ、グローバル社会においてさまざまな分野で競争力を発揮してゆくにあたり、80年代にさかんに米国で唱えられた「日本人論=日本人とはなにか?」から一歩進んで、「日本人でありつつ、いかにグローバル競争力を発揮していくか?」に読み替えられるのでは、と提言しました。
ストロナク学長は、次世代へのバトンタッチについて、「今の若い者は…というぼやきは誤った考え。いまの若い世代の価値観は、それより上の親の世代、我々が作り上げてきたものでしかない。我々年長世代には、家族観の継承やひととなりなど、教育を通じて伝えていく責任がある」として、第1回講義を結んでいます。
このほか、ひきこもりの研究などが専門の堀口佐知子 人類学准教授、ポップカルチャーから原発まで幅広い研究を続けるカイル・クリーベランド 社会学上級准教授、港区民大学では今年が初講義となる日露関係の専門家 ジェームズ・ブラウン 政治学准教授、国内外の各種メディアを通じて積極的に発言する ロバート・デュジャリック 現代アジア研究所所長、そしてこの4月に上智大への移籍後もTUJの活動に協力を惜しまない ティナ・バレット 上智大政治学准教授による講義が行われました。
港区民大学は、2007年から毎年10月下旬から11月中旬にかけて開催されています。詳しくはこちらのページをご覧ください。
【公開講座】 2014 港区民大学 at TUJ 「ジャパン・アズ・ナンバースリー」
== 講義ラインナップ ==
「日本:世界における経済力3位、担う役割2位」 Japan: #3 in Rank but #2 in Role
「”失われた20年”が若者にもたらしたインパクト:日本の若者は内向きに?」
Reconsidering the Impact of the “Lost Decades” on Youth: Are Japanese Youth Turning Introverted?
ジェームズ・ブラウン James Brown(TUJ政治学准教授)
「“ジャパン・アズ・ナンバースリー”と最新の日露関係」
Japan as Number Three and Its Contemporary Relations with Russia
ロバート・デュジャリックRobert Dujarric(TUJ現代アジア研究所所長)
「日本は世界の第三順位になろうとも」 Japan as Number 3: Why It doesn’t Matter
ティナ・バレット Tina Burret(上智大政治学准教授)
「日本のリーダーシップの変遷と復活の宰相(カムバック・キッド):第一次及び第二次安倍晋三政権の比較」 Political Leadership in Japan and the Comback Kid: Comparing the Political Leadership of Shinzo Abe in his First and Second Administrations
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