1年以上前、このブログで「高いか、安いか、それが問題だ」という記事を書きました。
テンプルの授業料の水準をどう見るか、という話だったのですが、「テンプル、授業料」というキーワード検索でヒットするらしく、わりとたくさんの人の目に触れているようです。
やはりお金の話は大事ですよね。
で、先日、大学関係者向けの某シンポジウムに参加したところ、日米の大学の授業料について新しいデータが入手できましたので、一部ご紹介します。
1988~2008年の20年間に、アメリカの大学の学費は、
公立4年制で、300%以上上昇
私立4年制で、250%近く上昇
しているそうです。一方、この間の平均家計所得の伸びは100%に届かない。
つまり、所得は倍にもなっていないのに、学費は2~3倍以上に値上がりした、というわけです。
(なかにはミシガン大学など極端な例もあります。1980~2010年の30年間で、学費なんと12倍!)
平均授業料(年間)を実額ベースで見ると、全体で35,000ドル、中規模私大では21,300ドル、公立が17,000ドル。
ただし、大学の多くが奨学金などの名目で、平均4割程度の「ディスカウント」をしているそうです。
では、4割引後の全体平均はというと21,000ドル。為替レートが80円だとしても168万円です。
日本の私大の年間平均授業料は約100万円、国立平均は54万円だといいますから、アメリカはやはりまだ高い感じがしますね。
なぜこのように学費が高騰するのか?
学生数を増やすと、それに比例して、あるいはそれを上回るペースで経費も増えていく、というのが、大学経営と一般ビジネスモデルの異なるところでしょう。
スケールメリット、というコンセプトが原則として当てはまらない世界のようです。
実際、アメリカではこの10年、大学への進学者数が26%増えていますが、この間フルタイム学生一人当たりの経費も、軒並み増えているというデータも提示されました。
この構造は、基本的に日本の大学でも同じはず。
これもシンポジウムで出た数字ですが、早稲田大学を例にとると、この30年間で授業料は約2倍に上がったそうです。他のソースも含めて、収入はこの間2.76倍に増えたが、支出は3.4倍に増えている。
入ってくる以上に出て行くお金が増えている、というのは、上の「構造」と一致しますね。
日本の大学全体では、公的助成は減り続け、直近の金融危機で資産運用収入も減少。
先日も新聞に、私学事業団の調査結果が載りましたが、「赤字の私大がなお4割」を占めているのが日本の現状です。
より重要な積年ベースでは、東洋経済の2010年度版大学四季報に掲載されている私大112校のうち、「累積消費収支差額」に▲がついていないのは、3割ほどしかありません。
それでも授業料を“安く”据え置くというこことは、「ある意味、将来の世代(未来の学生)にツケ送りしている、とも言えるのではないか」--パネリストの一人がこう発言されたのが印象に残っています。
一方で、「世界一、高等教育修了者の割合が高い国になる」という目標を掲げたアメリカでは、今後まだまだ大学進学者を増やす計画です。しかし、これまでの授業料上昇ペースが今後も持続するとは考えにくい。
では、授業料を上げずに、より多くの学生を受け入れるにはどうしたらよいか?
もちろん、寄付金を集めたり、資産運用成績を上げたり、公的助成を増やすよう働きかけるのも大事だが、「かぎを握るのはコスト管理と生産性の向上」――これは全米大学実務者協会会長の言葉でした。
シンポジウムでは他にもいろいろ有益な話を聞くことができましたが、要するに、
高等教育のコストはだれがどのように負担するのが公平なのか?
つまるところ、議論はその一点に集約されるような気がします。考えさせられた1日でした。
(中川)
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